書評:私が気になったビジネス本をご紹介

組織にある不条理は実は合理的?

職場

組織の不条理 – 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫)

組織作りに悩む経営者さん、管理職は非常に多い。

私も、何度も、組織作りに悩み、葛藤してきました。

また、成功の数十倍、失敗を重ねている人も多いと思います。

では、その失敗はなぜ生まれているのか?

あとで振返ると、「非合理的」に思う事も多いのではないでしょうか?

それがなぜ生まれるか?について書かれている、今年注目の名著となる1冊です。

組織の不条理 – 日本軍の失敗に学ぶ (中公文庫)

 

私の5段階評価 ★★★★★ 5

 

同書は、日本軍の失敗と、様々な大企業の倒産事例は、

実は、非合理的行動ではなく、合理的な行動を取った事で起こってしまったという結論を書いています。

経済学の理論と、経営組織論の理論などと、実際に起こった事例を対比させながら結論付けている。

同書では特に次の3つの理論を活用して回答を出しています。

「最新の取引コスト理論では、すべての人間は完全に合理的ではなく、完全に非合理的でもないと仮定される」

「エージェンシー理論ではすべての人間関係は依頼人であるプリンシパルと代理人であるエージェントからなるエージェンシー関係つまり依頼人ー代理人関係として分析される」

「健康な人々が加入せず、不健康な人ばかりが加入し、結局保険市場が成り立たないという非倫理的で非効率な現象が、アドバースセレクション現象」

「レモン市場と呼ばれる中古車市場では、典型的にアドバースセレクションが発生する可能性がある」

「所有権を明確にするような制度を形成するコストよりもその制度によってもたらされるベネフィットが多い場合だけ、そのような制度は形成される」

私たちは、後付けで、人の失敗を「なんでそんな事をするか理解できない」という風に考えがちですが、実はその当事者にとっては、それが、考えられる最も合理的な回答であったとは到底理解できない。

しかし、そうなっていることが多い、という点を突いているのが同書です。

組織は非合理的に動いてしまう事もあるが、それしか回答がない、という事も多いにありうるという事です。

そのためにどうすればいいか?何をしなければいけないか?という事も、最後に示している。

それが次の3つであり、人事制度や、目標、権限委譲といった点に見る事が出来ますが、今の組織づくりで極めて重要になっている点だと思います。

 

「多様な人材を採用する人事制度があれば、危機の時代に取引コストにとらわれることなく、企業は変革できる可能性がある。つまり、不条理は取引コスト節約制度を構築することによって回避できる可能性がある」

「経営者は明確に自らの利害と従業員の利害を一致させ、情報を対象化する様々な制度を設計する必要がある。つまり、有能な従業員を残し無能な従業員をレイオフするような制度を形成する必要がある。」

「経営者やリーダーは従業員に役割や権限が明確に与えるような所有権制度を設計する必要がある。このような制度のもとでは、従業員はマイナス効果を避けプラス効果ができるように職務権限を遂行するだろう。」

 

過去の名著である、「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)」と合わせて読むと非常に面白いです。

 

心にも、頭にも残しておきたいフレーズ

■非効率で非倫理的な組織行動は人間の非合理性によって発生するのではなく、人間の合理性によって生み出される

■日露戦争において装備の優れたロシア軍に勝った理由を強い精神力に求めてきた陸軍には、そもそも近代化された装備を積極的に受け入れようとする組織文化がなかった

■限定合理的な世界ではたとえ既存の戦略が非効率である事に気付いたとしてもより効率的な戦略や製品へと移行するには巨大な埋没コストと取引コストが発生するので、人間は容易には変化できないような不条理に陥ることになる

■白兵戦術は日本のような物的資源の少ない国の軍隊に適合し、この戦術を推進すればするほど日本陸軍は効率的に資源を蓄積しえたからからである。また、満州事変、日中戦争、香港攻略作戦、そしてビルマ攻略作戦ではこの夜襲による白兵突撃戦術はある程度効果的だったからである。

■日本陸軍は明治以来、精神主義にもとづく白兵銃剣主義を具現化したリーダーや兵士を高く評価し、そのようなリーダーを育成する組織文化を形成してきた

■さらに陸軍は日露戦争以来、この白兵突撃を陸軍のスタンダードとして多大な教育コストをかけて兵士を訓練してきた

■エージェントは依頼人であるプリンシパルと必ずしも利害は同じではないし、またプリンシパルはエージェントを完全に監視できないので、エージェントはプリンシパルの不備につけ込んで資源を悪用し、利己的利益を得るように行動することが合理的となる。これに対しプリンシパルはこのようなエージェントの悪しき機会主義的行動を抑制するような何らかの制度を事前に設置することが合理的となる
■栗林はサイパン、グアム、そしてペリリューの戦いをめぐる情報を得ておりそれを戦訓として十分活かしていた。また、沖縄戦でも八原参謀は硫黄島戦での栗林の戦術情報を得てそれを戦訓としていた。そこにはすぐれた組織に見られる組織学習効果が見出せるのである。

■このような環境の変化に対応できる組織として展開されたのは分権型組織としての事業部制組織である。

■すべてのメンバーが完全合理的で取引コストがゼロの場合には、組織形態とは無関係に組織内の資源は効率的に配分されていく。しかし、取引コストが発生する場合には、組織形態によって資源は効率的に利用されたり、非効率に利用されたりすることがある。これが、Rコースの定理の組織形態への応用である

■敗退する日本軍の組織内部では現状を維持しようとする力は低下し、中央集権型平時組織から現地分権型戦闘組織への移行にはそれほど多くの抵抗や反発は起こらなかった。つまり、この新しい組織への移行には膨大なコストは発生しなかった
■合理性と効率性は必ずしも一致しないのであり、人間の個別合理性によって全体非効率に導かれ、そして組織が淘汰される可能性があるといえる。

■不条理を回避するためには、自らが限定合理的である事を認識し、逆に権利の一部を奴隷や捕虜に与え彼らのインセンティブを高めるような穏健統治を展開する必要がある。このような方法を採用した典型的事例が大本営の激しい批判に抵抗して実行された今村均のジャワ軍政なのである。

■徹底的に組織を分権化して成功したのがカリスマ的な稲盛和夫率いる京セラである

■トヨタは現地資本の地元ディーラーが多いとされ、これに対して日産は地元資本のディーラーが減少し、メーカー直営店の比率が急激に増加している

■巨大企業の所有と経営を強引に一致させることによって生み出されるこれまでのような非効率な不正を排除するために、味の素は所有と経営を分離させ、分権性を進めている

■ソニーのカンパニー制は組織内部にあたかもいくつもの企業が存在しているような分権的な組織形態でありそれは市場的であるとともに組織的でもあるような、効率的な資源配分システムとなっている

■組織を形成し淘汰しそして進化させる原因が人間の限定合理性にあるという意味で、組織の本質はまさしく人間の限定合理性にあるといえるだろう。

■もし組織変革によって発生するベネフィットがそのコストよりも大きいならば、組織は自主的に変革されるだろうし、何よりもそのような変革を行わない組織は淘汰されるということ、これが取引コスト理論的な考え方なのである

■変化によって生み出されるコストが、あまりにも大きいか、あるいは変化によって得られるベネフィットがあまりにも小さい場合、たとえ現状が非効率で不正であったとしても組織はなおその行動を取り続けることが合理的になるような不条理に導かれることになる

■勝利主義は容易に完全合理性の妄想と結びつくのであり、これが組織を硬直化させ、不条理に導く原因となる

■老舗のおごりによって田端屋は、市場性を失った商品にこだわり、しかも手形から現金へと決裁の商習慣の変化にもついていけなかったのである

■人は大企業で成功すると傲慢になり、内部志向になり、そして社内のことを優先させるようになる。こうして、問題が起こる。何よりも、絶えず人間は批判的であるべきだということ、これがガースナーの考えなのである。

■批判合理的精神によって組織は不条理を回避しえ、絶えず組織は進化することになる

■組織が小さいときには、一方で管理能力のある人に管理上の権力を集中させ、他方で作業能力のある人は作業活動に専念する方が組織は専門化の原理に従って効率的となる。
しかし組織が規模の経済性を求めて巨大化し錯綜すると、一人のリーダーによってデザインされた計画や作戦はほとんど不完全なもののなる。

■ドラッカーは経営者は自立的な目標による管理によってミドルマネジャーを管理すべきだという。それは、企業が設定する数値目的にもとづいて上から下へ数値を細分化して強制的に命令し服従させる他律的な駆り立て式の管理ではない。逆である。

■大和心の経営とは、たとえ業績が悪くても誠実で正しいことを行おうとしている従業員を高く評価し、業績が良くても不正を犯すような不誠実な従業員を評価しないようなマネジメント

 

▼合わせて読む

ビジネスを撤退するタイミング・決断力とは?撤退の本質

Comments

comments

WSA代表竹内慎也の著書一覧

代表竹内慎也の書籍一覧です。

【一般書籍】
評価される人のすごい習慣

2017年11月30日発売

約2万人を育てた人材育成のプロが教える、

“評価される人"になる最強スキル!!

■PDCAよりも強力な「MAPS」
・著者が現場で実際に使っている万能ツール。
・1000社以上の企業で研修を行い、約2万人を育てた実績。
・結果を出したやり方を再現するので、誰でも同じ結果を出せる。
・“評価される人"に必要な特性、習慣が身につく。
・個人はもちろん、チームの力も上がる。

――仕事で成果を出そうとして「一生懸命やっているのに結果が出ない」。
――言われたことはしっかりとこなし「がんばっているのに、認められない」。

そんな悩みも、「MAPS」でダントツの結果を出せば解決できます!
【 著書紹介 】非エリートの思考法



2012年6月発売

2流大学出身、ニートの経験など、エリートと言われる人たちとは違う経歴を持つビジネスマンは多い。しかし、そんな非エリートたちの中には、エリートよりも早く出世していったり、商売感覚にすぐれていたり、稼げるビジネスマンになる人だっている。 どんな考えで、どんな努力で、どんな姿勢で、仕事をやっていけば一流と言われるようになるのかを説いた本。

【電子書籍】

仕事の本質


20代から30代にかけて仕事で経験することを、物語で紹介。このストーリーは、大学時代に遊び呆け、就職活動に失敗し、落ちこぼれ営業マンから、懸命な努力をし、トップ営業マンになり、その後、会社で最優秀マネジャーを獲得し 、最年少役員として名が挙がることになった、30代男性をモチーフとした物語です。
自然と営業マンとして必要なマインド、スキル、そしてマネジメントを行う上での原理原則から、今後10年間で必ず問われる、部下との接し方のポイントを学べるようにしたストーリー仕立ての書。




【その他】雑誌・ブログ等に記事多数寄稿。


執筆に関するお問合せ

コメント

コメントを残す

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>